STORY OF FERMATAVol. 01 フェルマータと考えるフェムテックの現在
2021.09.24
ここ数年で急速にマーケットが広がっているフェムテック市場。しかし日本ではまだその恩恵が行き届いていないのも事実です。世界のプロダクトを日本に紹介し、“誰もが生きやすい世界”のためのプラットフォームを作るべく様々な取り組みを行なう企業〈fermata(フェルマータ)〉に、フェムテックの現状と未来についてお話を伺います。
女性に共通するモヤモヤした思いを解決するために。
今回、お話を聞いたのは〈fermata〉のカマーゴ・リアさん。アメリカ・マサチューセッツのウェルズリー大学で女性とジェンダー学を学んだ後に帰国し、〈fermata〉では堪能な語学力を生かして海外メーカーとのコミュニケーションなどを担当しています。〈fermata〉が創業したのは、2019年のこと。一体どのような思いがあったのでしょうか。
創業者は公衆衛生の博士号を持つAminaとメディア関連の仕事をしていた中村寛子の二人。全く異なるバックグラウンドを持つ彼女たちですが、出会ってすぐに『女性が日本でライフプランを実現していくにはあまりにハードルが多い』という彼女たち自身の経験に基づいた思いで意気投合したようです。フェムテックのプロダクトの展示やワークショップ、カンファレンスを行うイベント『Femtech Fes! あなたの欲しいモノは、みんなの欲しいモノ』を2019年に実施することになり、これが〈fermata〉の始まりです」
イベントに冠せられた「あなたの欲しいモノは、みんなの欲しいモノ」のタイトル通り、イベントには共通するモヤモヤした思いを抱えた女性たちが多く集まりました。海外ではフェムテックという言葉の認知が広がり、実際に商品やデバイスが流行り始めていたけれど、日本ではまだまだその名を聞く機会が少なかった頃。実際どのようにして、世界でフェムテックという言葉が生まれたのでしょうか。
「実はサービスやプロダクト自体は、“フェムテック”がという言葉ができる前からあったものです。例えば最近日本でフェムテックとしてカテゴライズされている月経カップは、タンポンと同じくらいの歴史があるアイテム。繰り返し使えることで発展途上国に寄付されたり、アウトドア業界やサスティナブルに気を遣う人たちからの需要がありました。国内で医療機器として認められて販売されるようになったのは2000年以降ですが、国内メーカーが誕生するなど流通する商品の種類が増えてきたことで最近さらに認知が広まりましたね。
投資家に市場があると示すために欧米でフェムテックという言葉が使われるようになったのは、2010年代の前半です。そう呼ばれるようになってから、アメリカとヨーロッパを中心に爆発的に市場が拡大しました。アジアでの成長が顕著になったのはここ2、3年。アジアや日本国内では、吸水ショーツが盛り上がっています。繊維産業に携わる会社が手を出しやすいということもあり、大手メーカーも参入するなど物の選択肢は増え続けています」
健康課題の解決だけでなく、メンタルのケアも大切。
フェムテックという言葉の誕生の背景には、商品の拡大だけではなく、フェミニズムのムーブメントも関係しているようです。月経にまつわる不便さの解消から、セクシャルウェルネスやメンタルヘルスまで、包括する範囲は広がっているのだとリアさんが教えてくれました。
「フェムテックは、女性の権利を主張するフェミニズムの進化とも共に歩んできました。誕生以来少しずつ言葉の定義も変化していますが、今私たちはフェムテック=生物学的女性に特化した健康やウェルネスの課題を解決するための商品サービス全て、と認識しています。フェムテックというワードがメジャーになるにつれて、その時代の価値観が商品に反映されて市場自体が変化していくのを感じますね。〈fermata〉が目指しているのは、誰もが生きやすい社会。そのために世界のアイテムを日本に紹介したり、ユーザーのフィードバックをメーカーに伝えたり、カンファレンスなどのイベントを開催するなどプラットフォーム作りを進めています」
商品だけでなく、価値観も紹介したい。
イベントの他にも、実店舗「New Stand Tokyo」やオンラインショップなどで世界中のフェムテック アイテムを紹介している〈fermata〉。店舗のコンセプトや、取り扱う商品のセレクトの基準についても伺いました。
「『New Stand Tokyo』の日本第一号店がオープンしたのは、コロナ禍真っ只中の2020年夏。“未来の日用品店”がコンセプトで、ニューヨークにも店舗があります。私たちがキュレーションするフェムテック商品の他にも、店舗を共同運営するWTFCさんがセレクトしたユニークな日用品が並び、普段フェムテックという言葉に触れていない方も実際に商品を手にとり、使い方をイメージしてもらいやすい空間になっています。最初に〈fermata〉が取り扱ったのは、韓国の〈EVE(イヴ)〉というオーガニックコットンを使った吸水ショーツ。商品が良いのはもちろんですが、ジェンダーインクルーシブなコピーやビジュアルを大切にしていたり、サスティナブルにも配慮しているブランドです。会社の価値観自体に共感し、伝えたいメッセージが共通していると感じました。このようにただ海外のものを日本に持ってくることが目的ではなく、価値観や商品・ブランドのストーリーまで含めて日本の市場に自信を持って取り入れられるかという部分は基準として大切にしています。例えば、商品のコピーとして『女性のビジュアルはこうあるべき』といった特定の美的感覚を押し付けるようなメッセージは、私たちが伝えたいこととは真逆。市場が拡大し様々なメーカーが誕生しているだけに、〈fermata(フェルマータ)〉が伝えたいメッセージから乖離したものを手に取らないよう慎重に吟味しているんです」
Life&Beauty by JUN ONLINEでも
取り扱い中のアイテムはこちら
〈EVE(イブ)〉の
月経カップ用消毒ポット&月経カップ
「月経カップにトライするファーストステップとしてはもちろん、防災グッズとしても便利な月経カップと消毒ポッドのセット。ケースに月経カップを入れて水を注ぎ、電子レンジに3分入れると煮沸消毒と同じ効果を得られます。カップを使っていない時にしまうケースとしても使えて携帯でき、ケースがいらないときは折り畳めばコンパクトになります」
〈Rael(ラエル)〉の
生理周期別 /全4種 フェイシャルマスク
「月経周期に合わせて、自分の肌が欲しているものを選べる4種類のフェイスマスク。それぞれ良い香りなので、香りで選ぶのも良いと思います。仕事や運動も無理して毎日同じことをやり続けるのではなく、ホルモンによる体の変化を意識して時には休憩を入れても良い。このアイテムによって、そんなことを意識するきっかけになると良いですよね」
〈Period(ピリオド)〉の吸水ショーツ
「私自身も愛用している吸水ショーツです。足ぐりの締め付けがなく履き心地が良くて、自分にとっては吸水量も過不足ないので気に入っています。吸水量は20mlあるので、これ一枚でももちろん使えますし、月経カップと併用すればより安心して使えます。」
〈proof(プルーフ)〉の吸水ショーツ
「〈proof〉はアメリカのブランドで、吸水ショーツ以外に吸水ブラも出しています。母乳が出る時期や、運動して汗をかいた時に普通のブラが蒸れるのが不快な方におすすめ。Tバックのタイプもとても人気がありますね。パッケージが工夫されていて、吸水量によって箱の色が違うんです。箱の色が薄いものは吸水量が少なく、濃いものは吸水量が多い。一番色が濃いワイン色のパッケージのものは、一番薄いものの倍吸収してくれます。」
選択肢が増えてきているだけに、「自分に合ったアイテムは何か」と悩んでしまうこともあるフェムテックアイテム。〈fermata〉は、ブランドのコンセプトやメッセージに共感したものを使ってみる、という基準を提示してくれました。フェムテックの世界は、女性の心身への悩みの数の多さを示すように、広がり続けているようです。
TEXT: RIO HIRAI
PHOTO: SOICHI ISHIDA
fermata
「あなたのタブーがワクワクに変わる日まで」
日本のフェムテック市場を創出し、今まで「仕方ない」と見過ごされてきたウェルネス課題への解決策を届ける。
https://hellofermata.com/
New Stand Tokyo
ADDRESS: 〒106-0032東京都港区六本木 7-2-8 WHEREVER 1F
OPEN: 月・水~金・日 12:00-19:00
CLOSE: 火・土
エディター RIO
大学在学中に編集アシスタントをスタートし、2016年独立。
ライフスタイル全般の様々なテーマに取り組みながら自分の働きやすさを追求した結果、
フェムテックに助けられ、女性誌で特集を担当するように。