IN THE KITCHENあの人の台所 VOL. 02 サルボ恭子さん 料理家
2021.07.30
クリエイターのキッチンを訪ねる連載2回目は、料理研究家のサルボ恭子さんが登場。自然光がたっぷり入るキッチンつきのアトリエは、料理教室や取材、撮影を行う仕事場だそうです。Life&Beauty by JUN ONLINEのラインナップから気になるアイテムを選んでいただき、モノ選びのこだわりや美学、道具使いのヒントを教えてもらいました。
サルボ恭子さん
料理家。
老舗旅館の長女として生まれ、料理家の叔母に師事したのち渡仏。パリのグランメゾンに勤務した後、帰国。料理家のアシスタントを勤め、2008年に独立し料理教室を主宰するように。雑誌やテレビなどでも活躍し、手がけたレシピ本や著書も多数。素材を活かした味付けと調理方法で、洗練された家庭料理を提案する。
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調理道具が所狭しと並ぶ
海外仕様のキッチンスペース
東京都、世田谷区の閑静な住宅街にある、サルボ恭子さんのアトリエ。入ってすぐに目に入るのが、白を基調にした大きなキッチンスペース。「もともと外国人向けの住まいだった物件で、キッチンは調理台が高めに設定された海外のもの。作業スペースやシンクも縦の幅があって広く、料理教室の大人数での調理ができるようになっています」
キッチンの脇には、自身の著書やレシピ本、さらにフランス語の食材や食文化にまつわる本がずらり。さらに、世界中の料理についてまとめられた資料も大切に保管されています。“シンプルで身の丈にあったこの空間が気に入っている”というサルボさんは、あまり整然としすぎていないレイアウトの方が落ち着くのだという。確かに、生徒さんと試食を行う長いダイニングテーブルに並ぶ椅子は少しずつデザインが異なり、所狭しと平積みにされた調理道具も様々な種類のものが混在している。どれも、一見不揃いなようで心地いいリズムを奏でていて、サルボさんのスタイルとユーモアが感じ取れます。「アトリエの収納で気に留めていることは、一目見てすぐにわかること。どれも飾りではなく、あくまで道具なので合理性が大切だと思っています」。ホーロー鍋やセラミック製品、金属製のベイクウェアに温もりを感じさせる木製の道具たち。どれも自然と手元に集まってきた、愛着のある品々です。
天井が高い縦に広いワンルームは、大きな窓から太陽の光がさし、ポジティブなエネルギーに満ちた明るい空間。一瞬東京にいることを忘れて、海外にいる錯覚を覚えるようなムードに包まれている。「自宅の延長のような雰囲気だとは思いますが、1年ほど前に引っ越した自宅は純和風なんです。ここは、基本的に料理教室や撮影で使うことが多いですね。あとは、教室や撮影の準備をしたり、料理の資料を見に来たり。それから、朝早くに来て朝食を取り、調理道具やベランダで育てているハーブや室内のグリーンの手入れをすることもありますよ」
つい興味をそそられてしまうのが、窓際の棚に陳列された食器の数々。料理教室に使うために複数個セットで用意され、光を浴びながら出番を持っている姿が印象的です。よく見ると、様々な年代のものがあり、色や素材も実に多様です。「食器に限らずですが、ものを選ぶ上で重視している点は、ハードユースなものは丈夫なものにすること。料理教室は参加型の形式をとっているので、繊細過ぎず食洗機OKで、いつでも買い足してストックできるものが理想的です。レストランでも使用されているグラスと、業務用で料理が映える白い食器は必需品」。中には、アンティークの食器もあり、顔を覗かせています。「フランス製にこだわりはなく、各地で手に入れたものです。コレクターではないのですが、南仏など地方での掘り出し物や、偶然通りがかったブロカントで出合ったものを愛用しています。パリでは値段が高いということもあり、あまり買わないですね」
キッチン内で愛用しているのは、バルミューダの家電製品。オーブンの上に乗せたトースターは、教室で出すバゲットを焼く際に大活躍なんだとか。白い壁とタイル、ステンレスに覆われたキッチンに違和感なく置くことができる洗練されたデザインは、さすがといったところ。このほかにも加湿器や扇風機を愛用中だとか。STAUBの鍋の山の奥には、かまどさんの鍋を発見。ヨーロッパを思わせるアイテムに、和のものが自然と共存しているのもサルボさんならではのスタイル。
その他にも、大小いろいろなサイズの木のカッティングボードが平積みにされ、木のへらはラフに壺に刺すなど、利便性を損なわずに様々な木の表情が見て取れる、目にも楽しいユニークな調理道具の収納方法が。また、大量のスパイスやナッツ、粉類は保存瓶に入れて保管している。理由としては、教室などでかなりの量を消費するため、取り出しやすく残量もわかりやすいので、使い勝手がいいのだとか。湿気が入らず、香りを閉じ込めてくれる密閉度も利点の一つ。さらに、袋物などの文字が多いデザインを気にしなくていいからだそう。並べて置かれていた紅花のドライフラワーも、素敵なレシピの調理が始まりそうな予感を感じさせる、粋なセンスが光ります。
サルボ恭子さんが使ってみたいもの
Life&Beauty by JUN ONLINEから、サルボ恭子さんが気になるアイテムをセレクトしてくださいました。ご自宅やアトリエでの調理中に「あったらいいかも」と気になった調理道具をご紹介します。
フランス西部、ナントの
老舗工房が作る野菜ブラシ
自身のレシピで、よく野菜を使うサルボさん。普段から、野菜ブラシを使用されているのだそう。ボウルに水を張り、丁寧に野菜の汚れを落としていきます。「日本に比べて、海外で購入する野菜は土が付いていることが多いです。日常的にマッシュルームブラシはよく使っていますね。これは、硬い毛と柔らかい毛に分かれているので、野菜の種類や部位によって使い分けができそうです」
大きめサイズの角ザルは
たっぷりの野菜の水切りに
茄子やインゲンなど、夏野菜が美味しい季節。見た目が色鮮やかで、水分と栄養が取れる野菜マリネがぴったりのメニュー。「この角ザルは角バットと合わせて使うことができます。ザルに足が付いているので、水切れが良く野菜の持ちがいいはず。このサイズは4、5名用に適していて、1人や2人暮らしの方の日常使いには、1/2サイズがオススメ。他にも、揚げ物の油を切るのにもいいかもしれません」
蓋付きの角バットは
平積み可能な優れもの
3.6Lという大容量の角バットは、野菜マリネを和えるのに大活躍。そのまま蓋をすれば、冷蔵庫で重ねて保管ができます。「肉、魚のマリネや衣をつけたフライ前のものなど、下ごしらえにもいいですね。ラップを使わず済むところも気に入っています。他には、開封して中身が残っている袋物や調味料の整理箱としても活躍してくれそうだと思いました」
食卓に花を添える
取り分け用スプーン
少し無骨な風合いのホーロー製のスプーンは、野菜マリネに添えれば料理が映え、食欲をそそる演出に。「大きすぎず小さすぎないところがいい。こういったスプーンはステンレスか木製が多いのですが、ホーローで白いと清潔感があって素敵。炒め物やサラダなど、料理が美味しそうに見えますし、白だからだんだん色がついて表情が出てくるのも、使いつづける楽しみです」
見た目もサイズも丁度いい
植物由来のキッチンクリーナー
調理の後のコンロや作業台、水周りの拭き取り清掃には、手軽なキッチンクリーナーが役立ちます。「見た目がシンプルで、キッチンに置いてもいいと思えるデザイン。植物由来成分100%でできているので素肌への刺激が少ない点が気に入り、選びました。手のひらに収まるコンパクトなサイズで、すぐに手に取ることができ、使い易いと思います」
道具の本質、機能性とものとしての美しさを、確かな審美眼で見極めるサルボ恭子さん。アトリエからは、日本人の視点と海外生活で培ったノウハウによる、独自のシックで奥行きのあるセンスが感じ取れ、ここで味わい深く美しいレシピが生まれているのだと感じました。また、ただ整えるのではなく、自分が心地よいバランスを知る、大人の遊び心が素敵です。
TEXT: AIKA KAWADA
PHOTO: SOICHI ISHIDA
エディター AIKA
大学卒業後、語学と服飾デザインを学びにパリへ。
バイトで始めた編集・ライターが本業になり、ファッションやビューティを中心に執筆。
週末は映画とビオワイン、パンがあれば幸せ。
瞑想とアーユルヴェーダが気になる。