IN MY ROOM古い家具、植物と陶器が織りなす和洋折衷 VOL.04 AYA COURVOISIERさん/セラミック・アーティスト
2023.08.10
住まいの空間作りの肝となるのは、家具のセレクトと間取りの活かし方。
お宅訪問の連載4回目は、クヴァジエ・アヤさんが登場。和室のあるヴィンテージマンションに、古い家具や観葉植物、手がけた陶器の作品を美しく調和させています。和と洋をミックスする秘訣と、Life&Beauty by JUN ONLINEのラインナップから、お部屋で使いたいアイテムを伺いました。
AYA COURVOISIER(アヤ・クヴァジエ)
1993年、福島県生まれ。大学進学時に渡仏。パリで陶芸技術を学ぶ。骨董品やヴィンテージの買い付け、現地コーディネーターとして働く。2019年に日本に帰国し、現在は東京を拠点に、セラミックアーティストとして活動。
Instagram: @ayacourvoisie和室をアレンジしたリビングルーム
都内のマンションに住み、徒歩圏内にアトリエを構えて活動しているアヤ・クヴァジエさん。伺ったのはパートナーとシェアする、築40年近くになるという80平方メートルの3LDK。フランスと日本にルーツを持つ彼女らしい、インテリアコーディネートが印象的です。
「全部で25件もの物件を見て、現在の部屋を見つけました。初めての東京での物件探しは、フランスの住宅条件との違いもあって、大苦戦。十分な広さと日当たり、縁側みたいな廊下と床の間のある和室が気に入って入居しました」。
パリ在住時から、骨董品やヴィンテージの買い付けや、コーディネーターの仕事をしていたというアヤさん。部屋の中にある家具やオブジェも、新品の既製品はほとんどなく、古いものだといいます。ソファもパートーナーが使っていたものに、新しく布を掛けて使っているのだそう。
「床の間は、大好きなものを並べて楽しむスペース。門前仲町で購入した猫の絵やタペストリー、フランスの作家さんの陶器の作品などを置いています。縦に細く伸びるデザインが好きなので、石などでできたオブジェや花瓶はそういった特徴のものが多いかもしれません。フランスの物件は家具付きがほとんど。お気に入りだったサイドテーブルは解体してスーツケースに入れて持って帰ってきたんですよ」。
床の間に映えるオブジェや畳の上に置かれたランプ。従来の和室の使い方にとらわれないインテリアコーディネートは、アヤさんの感性によって和と洋が無理なく呼応し合っています。
DIYで作成した本棚はパートナーとの共同スペース。それぞれの趣味趣向が現れた本が、混在しているのが面白いといいます。上段にはランプが光り、中央には、自身のグラフィカルな作品も鎮座。
「和のムードが色濃く残る昭和の家具も大好き。古道具屋やセカンドハンドの家具屋さんで、見つけることが多いです。和室に似合いますし、日本の住宅に無理なくはまるサイズ感も魅力ですね。結果、有効的にスペースを使える気がします」。
無造作に積まれた日本語とフランス語の書籍の合間にも、キャンドルや食器、和小物が置かれ、独特のリズムを醸し出しています。
日差しがたっぷり入る縁側はサンルームに
大きな窓から、夏も冬も季節問わず日ざしがたっぷり入る縁側はサンルームとして使用中。
「植物とセカンドハンドのサンチェアを置いていて、くつろぎの場にしています。カーテンは気に入った白い生地を切断せずにカーテンレールに取り付け、余った分はぐるっと巻いてつるしに。せっかくだから光を遮りたくないと思い、アレンジしました。植物は、あまり種類や置き方を考えすぎずに、気に入った植物を集めています」。
カーテンを取り付けないことで、部屋に圧迫感が出ない。障子ガラスの引き戸は、和室に日差しが通り、ダイニングからはグリーンが透けて見えます。空間を遮らずに、広く見せる工夫がここにも。
パリのエスプリが香るダイニングルーム
ダイニングルームがユニークなのは、椅子の種類やデザインがバラバラだから。木製の落ち着いたトーンで統一しつつ、遊び心が見える楽しいコーディネートです。
「ダイニングの椅子は、日本に住んでいる外国人の方が、帰国する時に受け継いだものです。テーブルクロスはヴィンテージのリネンで、中央にあるカラフェの瓶はパリで愛用していたものを持ってきました。友人たちを招いて食事をすることもありますよ」。
ダイニングテーブルを囲む、背の高い木棚やスピーカー、出窓の前にあるスペースにも、 見所がたくさん。
「この木棚も昭和のヴィンテージ家具です。ほとんどの作品はアトリエで保管しているのですが、曲がったり欠けてしまったもの、破片も棚に並べています。下段はパリで作っていた古い作品。パリの蚤の市で見つけた金属製のクープやオブジェ、キャンドルスタンドと一緒に置いています。作品づくりは、このような古いものからインスパイアされることが多いです」。
常に好きだと思えるものを身近に置いて、並べたり眺めていたりすることを楽しむ。そんな日常的に接するものから影響を受けて、作品作りが始まるといいます。
「スピーカーの上のピッチャーは、パートナーの祖父の家の蔵で見つけていただいたもの。その隣にある木の一輪挿しの花瓶は、作家の前田洋さんの作品です。その下にあるのはひょうたんの形のキャンドル。香りものと音楽は、生活必需品ですね」。
出窓の前には、アートブックやオブジェなど各地で集めてきたアイテムが。カーテンはお手製で、お気に入りの古い布を窓のサイズに切って、麻ひもでカーテンレールにくくりつけたもの。はじめはグリーンのカーテンを探していたそうですが、思いがけず出合ったぬくもりのある風合いと色に惹かれ購入、自分らしいアレンジを加えたそう。
お部屋に点在するアヤさんが手がけた陶器の作品
ダイニングテーブルの中央や食器棚に置かれた、真珠で縁取りをしたようなプレート。「PERLE」と名付けられたデザインは、彼女を象徴する作品のひとつ。自らも、生活に取り入れて毎日使用しているそうです。
「陶芸はパリで、友人に誘われて始めました。フランスでは、均一に綺麗に作る技術よりも、ラインの妙や歪さを楽しむ感覚があるように思います。私自身は、パリで陶器を作ると意図せずとも渋い作風になり、日本で作ると洋食器の雰囲気の作品になるんです。作り続けているとどうしても形が整い過ぎてしまうので、あまり整然と作りすぎないように気をつけています。ちょっとした揺らぎに、魅力を感じます」。
他にも、作った陶器のなかで歪んだり欠けたものは、鉢植えやその受け皿として活躍中。多種多様な姿形は、つい微笑みたくなるくらい表情が豊か。美に完璧を求めないフィロソフィーが垣間見られます。
ダイニングの棚には過去から現在の作品が並び、アヤさんの作風の変遷が見て取れます。歪んだり割れてしまった破片からも、作品への愛情深さが伺えます。
レトロなキッチンにはインスピレーション源がたくさん
入り口のアーチのデザインが印象的なキッチン。十分な収納量の戸棚と、作業しやすい広さの調理台が確保されています。
「目に見える食器棚には、気に入っているアイテムだけを陳列。日常使いする食器は、歴代の自分の作品に加えて、作家物やヴィンテージのものを選んでいます。食べ終わったホタテの貝殻も、いつか型押しに使えるかなと思いとっておいてあるんです」。
よく使うお茶の葉やドライフードは、バスケットにまとめて。
セラミック・アーティスト、AYA COURVOISIERさんが気になるアイテム
朝も夜も使いたい、気持ちが落ち着く〈KOTOWA〉のヒノキのお香
「アトリエではいつも、セージやヒノキの香りを焚いて気持ちを落ち着け、制作するようにしています。伝統的な日本の技術でつくられたお香とのことですが、すでにリピート決定なくらい上品な調香が気に入りました。集中力が続きそうな香りですし、朝も夜も使いたい。以前作った作品を香皿に、付属のお香たてを乗せています」。
どこにでも溶け込むモダンな佇まいの〈vadle〉のキャンドル
「まず目をひいたのは、陶器のモダンな佇まい。部屋のどこに置いても溶け込んでくれそうだと思い、『patchouli + bergamot(22)』を選びました。使ってみたいと思ったポイントは、メディテーションを掲げたコンセプトと、木にワックスを染み込ませた芯に火を灯すことで有害物質が出ないところ。パチパチと音を出して燃えるので、気持ちが穏やかになりそうですね」
〈CAMALDOLI〉のトゥースペーストのパッケージに一目惚れ
「イタリアの修道院のムードが漂う素敵なパッケージに一目惚れ。毎日使うトゥースペーストは、できるだけオーガニックで、気に入った香り、ヴィジュアル的にも気分を上げてくれるものを選ぶようにしています。ミントとハーブのフレーバーですが、ミントが辛味も強すぎずちょうどいい。大容量なので長く使えそうです」。
自分自身のルーツを感じさせるような、古い家具選びと心地いい空間作り。そして、自然体でありながら作品作りを通して美を追求し、生活の楽しみやユーモアも忘れない。そんな、アヤ・クヴァジエさんの住まいには、パリシックなセンスと日本人として忘れていた和室の魅力が詰まっていました。
TEXT: AIKA KAWADA
PHOTO: SOICHI ISHIDA
エディター AIKA
大学卒業後、語学と服飾デザインを学びにパリへ。バイトで始めた編集・ライターが本業になり、ファッションやビューティを中心に執筆。週末は映画とビオワイン、パンがあれば幸せ。瞑想とアーユルヴェーダが気になる。