IN MY ROOM住まいをモードに演出する、黒のグッドバランス VOL.05 根本晶さん/デザイナー
2023.11.17
お宅訪問連載、第5回目は根本晶さんが暮らすお住まいへ。重くなりがちな黒い家具や家電製品、インテリアを取り入れているのにも関わらず、室内は軽やかさとポジティブなムードに溢れています。黒のグッドバランスを伺うとともに、Life&Beauty by JUN ONLINEのラインナップから、毎日に取り入れたいアイテムを伺いました。
根本晶
フリーランスデザイナー。〈MeisMe design〉の名義で活動中。自身のブランド〈MeisMe(メイスム)〉を展開しながら、舞台、映画、TV、CMなどでアーティストやアイドルの衣装制作、さらにホテルやレストランなどのユニフォームデザインも生産管理まで手掛ける。
Instagram: @aki_nineアーチ型の大きな窓と黒いカーテンが効いたダイニングルーム
ベーシックなアイテムを女性らしく、抜け感がある絶妙なデザインの洋服が人気の根本晶さん。幅広くデザインの仕事を請負う彼女が住むのは、都内の閑静な住宅街にあるマンションのワンフロア。一室をアトリエとし、仕事場も兼ねています。引っ越してきて3年目。この物件に決めたポイントは、特徴的な大きな弧を描く窓と、キッチンとバスルーム以外は床がカーペットなところだそう。
「地上階なのですが、建物の構造上、窓から見える景色は一階らしくないんです。採光がたっぷりできて緑がたくさん見える景色は、日常の癒し。仕事の息抜きで、ダイニングで過ごすことも多いんですよ」。
欲しいものがなかなか見つからなかったことから、カーテンは自作。ややマットなテクスチャーのポリスウェードに、薄く黒いメッシュ素材のカーテンも合わせています。既製品では絶対に見つからないオリジナリティ溢れるカーテン。窓の黒いフレームとも調和しています。
「引っ越し前に、置いても圧迫感がないテーブルと椅子が欲しいと思っていました。お目当てのデザインのアイテムを探し求めて、オンラインのオークションで発見し手に入れました。特にテーブルはもう廃盤になってしまったサイズのものを、少し安く購入できたのでラッキーでしたね」。
〈ヴィトラ〉のベルヴィルチェアには、〈ドリアデ〉のCUGINO(クジーノ)ガラステーブルをチョイス。部屋のカーブに反発しないように選んだのが、アームの曲線ラインが特徴的な椅子とガラス製の天板のテーブルでした。
「まるでザルをひっくり返したような照明は、ベルリンの雑貨屋さんで購入しました。ランプシェードが金属製でネット状になっていて透け感がある。存在感があるデザインなのに重くないところが好きですね。窓際の景色に干渉しないところも優秀です」。
ランプシェードの模様が遮光カーテンの透け感と呼応して、ダイニングはまとまりのあるコーディネートに仕上がっています。
ミニマルな美意識が光るリビングルーム
リビング中央の黄色いソファーは、パートナーが一人暮らしをしていた時に使っていたもの。奥の黒い革張りのソファーは、根本さんが一人暮らしの際に愛用していたもので、お互いの愛用品を組み合わせて使っているといいます。
コーヒーテーブルは、パートナーの従兄弟のお手製だそう。視覚的にノイズになる家電製品は、できるだけ露出させずにしまう。根本さんの住まいに対するモットーが垣間見られます。
「天然の切り株の形を生かしたコーヒーテーブルは、いいアクセントに。卓上には黒猫を模した入れ物にリモコンを収納。視界に入れたくないアイテムはすべて収納棚にしまい、どうしても必要なものだけ手がのばせる場所に置き、見せ方で工夫するようにしています」。
「夫の影響で音響にはこだわっていて、スピーカーとウーハーをテレビにも繋げて使っています。テレビのスタンドは、規格が異なるものなんですが、後ろに板を足して組み合わせて使っています。カーブのある窓で丸いテーブルを置いていることもあり、テレビのスタンドもカーブがある方が合うと思って選びました」
妥協して規格があった既製品を買うのではなく、デザインが気に入ったものを工夫して使う。納得がいく空間に仕上げる秘訣だそうです。
キャビネットは、「ボーコンセプト」で購入。サイズ感とデザイン性にも関わらず、10万円強というお手頃なお値段だったことが購入する決め手に。
「実は本当に欲しいデザインのものは一部が革張りになっていて。とても高価なものだったんです(笑)。でもシンプルな分、花を生けた花器やオブジェ、アートブックを置いて楽しんでいますね」。
室内に点在する植物と花器
器は目白のセレクトショップ「セメント」で買い求めたもの。2つの花器は、いずれも作家の野口寛斉さんの作品で、個展で手に入れたものと友人からの贈り物だそうです。手前にはチェンマイのお土産の染物が。
「花はいつも自分で生けています。この花瓶は飼っていた猫に割られちゃって金継ぎして修復しました。あまりに悲しんでいるのを知った友人が同じ作家さんの花瓶をプレゼントしてくれたんです」
床置きしている背の高い花瓶は、今はなき中目黒のヴィンテージショップで購入。
「花を高く生けるのが好きなのかもしれません。趣味で写真を始めたのですが、最近はお仕事のお話をいただくことも。撮影のプロップとして花が必要ということもあり、常に家の中に植物があるのが嬉しいですね」
「食卓の上の花もお仕事で使ったもの。小分けにしたり他の植物と組み合わせてアレンジしてみたり。ちょっと合わないなあというときもありますが(笑)。もちろん気が向いたとき、自分のために花を買うこともありますよ」
たまたま手に入った植物も、自分の感性で飾ってみる。トライアンドエラーを繰り返し、生活の中に楽しみを見つけることが、美しく暮らすコツなのかも知れません。
黒に魅せられたトーマス・ルフの作品
アーティストである、トーマス・ルフの宇宙や惑星を撮影した作品を壁面に2枚並べて。黒でまとめた理由は、愛猫にありました。
「不思議なことに右の作品が以前飼っていた黒猫の目に見えたりもして、思い入れが深い作品です。額装も専門家にお願いしました。キャビネットの上にも同じアーティストのアートブックを置いて、たまに眺めるのが至福の時間。定期的にページをめくって、気分転換しています」
玄関口には、白い空白に#thomasruffのハッシュタグだけを描いたデジタルアート作品が飾られています。チップが内蔵されていて、スマートフォンを近づけるだけでインスタグラムの#thomasruffの投稿に飛ぶというコンセプトだそう。
「トーマス・ルフの作品ではないのですが、デジタルで最新のアートを見るという試みが面白いと思いました。アーティストで友人でもある松田将英さんの作品で、玄関に入ってすぐのところにあるので、ちょっとした話題にもなるアートピースです」
部屋に個性を与えてくれるアート作品
リビングの入り口すぐの壁面にも、写真のアート作品が並んでいます。
「磯谷博史さんの作品は、海外で出合ったアート作品を接写しセピア色で出力した写真だそう。額の一部が、被写体の実際の色に塗られているユニークな作品です。右の作品は、もともとは青い鳥だったから、フレームの一片が青く塗られているそうです」。
友人を招いたときや荷物を置きたいときに活躍する、リプロダクトのネルソンベンチ。その上には、京都を拠点にしているアーティスト、八木夕菜さんの作品が。左の富士山を写した作品は、キャビネットのアクリル作品と同じシリーズ。隣にはステンドグラスを写した作品が並んで置いてあります。 ちょっとした空間にも大好きなアート作品を置くあたりに、美術への愛情を感じます。
デザイナー、根本晶さんが気になるアイテム
ディフューザーとしても使えるルームスプレー
「ルームフレグランスは、ホルダー機能を兼ねたストーンスタンドが新しいと思いました。瓶を少し傾けて置けるのも素敵ですし、吹きかけたら香りが継続する。八木夕菜さんのアクリル作品とぴったりだったので、並べて置いています。ウッド系の香りが好きなので『THE DAN(01)』を選びました。夜に食事を終えてネットフリックスを見る前に、スプレーすることが多いです。香りが強すぎないところも、ちょうど良いですね」。
まるでオブジェのような佇まいのカッサ
「インスタグラムの広告で見て気になっていたアイテム。カッサは木や石の有機的な素材のものが多いですが、メタリックなのが珍しい。一見カッサに見えないところが素敵ですよ。器の上に置いて、時間ができたときにさっと手に取っています。オイルを塗って腕をマッサージするときも。手になじみやすい形状で、カーブしているラインが体に沿って使い勝手が最高にいいです」。
ユニセックスな香りと爽やかな洗い上がり
「シャンプーは仕上がりに差が出るので厳選しているのですが、バスジェルはそこまでこだわったことがなくて。色々試せて遊べるアイテムだと思っています。まず目を引いたのは、ボトルのかわいさ。バスルームに違和感なく置けそうな点がポイント高かったです。パインの成分が入っているからなのか、清涼感ある洗い上がりにも驚きました。肌はしっとりするのにスースーして、気持ちいい。さっぱりしたローズマリーの香りも使い心地がいいですよ」。
黒の分量、そして無機質と有機質、直線と曲線のバランスを考えて、インテリアを調整するという根本さん。洋服のコーディネートのように考える、スタイリッシュで心地いい空間作り、参考にしてみてはいかがでしょうか。
PHOTO: SOICHI ISHIDA
TEXT: AIKA KAWADA