STORY ABOUT WAPHYTO森田敦子が考える美しい生き方
2021.04.16
日本における植物療法の第一人者として知られる森田敦子さんが手がける〈Waphyto(ワフィト)〉は、昨年のデビュー以降、美容のプロもうならせる名品を続々と輩出しています。ブランド誕生に至るまでのストーリーやこれからの未来のことなど様々なお話を伺いました。1人の女性の情熱と慈愛が、ブランドの枠を超えて時代のうねりを生み出そうとしていると感じた取材を2回に分けてお届けします。
日本人にあった植物学の体系化
今から35年以上前に今後の中国語の重要性を感じ、いち早く中国へ語学留学。その後、自らの体調不良がきっかけで、日本ではアロマテラピーという言葉さえ知られていなかった時代に、フィトテラピー(植物療法)を学ぶためにパリ13大学へ渡仏。そしてフェムテックという言葉が生まれる遥か以前から、フェミニンケアの啓蒙をスタートさせる。
このエピソードを羅列するだけでも、森田敦子さんという人が先見の明を持ち、時代の先を行くパイオニアであることが伝わるのではないでしょうか。そんな彼女が手がける〈Waphyto〉へと繋がるストーリーの始まりは、パリ13大学での学びを終えたところへと遡ります。帰国した森田さんの頭に浮かんだのは、人間の身体と暮らす土地は一体であるという考え方を表す“身土不二”という言葉。
「解剖学を経験し、西洋人とは肌も細胞も腸の長さも違う日本人にあった植物学の体系化の必要性を感じたのです。帰国後はすぐに故郷である東三河に向かいました。地質学の研究をしていた母に『敦子、土壌が大切だよ。日本の土壌やそこに生えている植物を見直しなさい』と言われて。そこから土壌にある微生物や鉱物、菌の遺伝子の配列の解析を始めました」
研究を進めるうちに、東三河は世界的にみても肥沃な土地であり、豊かな栄養を蓄えた植物が豊富に育っていたことが科学的にも証明されました。
「三河といえば、徳川家康です。彼も本草学と呼ばれる古来の植物学を学び、あの時代に76歳まで生きた長寿でした。彼の残した古文書に『三河の薬草は、いつか未来の誰かが掘り起こせ』という一文があるんです。それを目にした時に、『ん? 私だって(笑)』」
日本の植物学の素晴らしさを広めたい
〈Waphyto〉が提唱する植物バイオメソドロジーは、フィトテラピーを学んだ森田さんが日本古来の本草学を融合させ、テクノロジーとエビデンスとともにブラッシュアップさせたもの。
「本草学と何が違うのかというと、本草学は臨床学なんです。科学的分析や解析がない言わば、おばあちゃんの知恵。
バイオメソドロジーは、植物の持っているDNAとRNAを科学的に配列を解析することで、植物の機能性や効能を構造的に把握するんです」
植物のエッセンスの抽出も、大学とタッグを組んで行われた解析をもとに、それぞれの植物に最適な温度と圧力をかけて、特殊な抽出法によって行われている。
「〈Waphyto〉は東京から生まれるいちブランドではなく、土壌学、地質学、農学の先生方、大学の方々の協力、そして慈愛に満ちた東三河の農家の方々によって作られたもの。〈Waphyto〉を出そうと思ったのは、和のフィト。日本の植物学が最高だということをこれから世界に知らせたいんです」
なぜ5種類の植物にフォーカスしたのか?
桑、菊、ゴツコラ、ヨモギ、スギナをキー成分に据えている〈Waphyto〉。なぜこの5種類なのでしょうか?
「特に髪や肌、体の内側から再生させるトップの組み合わせを選びました。例えば、スギナと菊の組み合わせ、これは髪に抜群にいいんです。
桑とヨモギは肌や粘膜。ゴツゴラは血流改善に効果的です。さらにこれらの植物は東三河の肥沃な大地で育った根粒菌、微生物の働きによって、ヨーロッパにはない強さを持っています」
自身が髪を失った経験から、ヘアケアプロダクトにも情熱が注がれている。
「髪質に合わせて2種類を用意しました。ナーチュアの方は、髪を根本から立たせてくれます。髪の乾燥が気になる方はエレベイト。スキャルプローションは頭皮に栄養を与え、髪を細くしないように。ラウレス硫酸ナトリウムを使っていることを懸念される方もいらっしゃいますが、うちのブランドは石油由来ではなく、植物由来のものを採用しています」
異なる香りで気分によって選べるハンドクリームは、手先の微小循環も整うような香りの処方になっている。
「手先から温めることは実は健康にもつながっています。べたつきもないので、塗った後すぐパソコンが打てるくらいです」
新しい時代の美しい生き方とは
さまざまな人生の旅を経て森田さんが〈Waphyto〉を通じて伝えるのは、100年時代を美しく生きようというメッセージ。
「私自身が若いときに身体を壊して、回復する過程で感じたのは、細胞は再生するということ。これからは人生100年時代といわれ、そのぶん大変なことも起こると思うんです。女性は、妊娠、出産、介護、仕事など常にマルチタスクですから。
でも見方を変えてそれを楽しんでほしい。妊娠出産のケアも、プレ更年期も予防していればひどくはならないんです。〈Waphyto〉のアイテムもそうですが、まずはちゃんとセルフメディケーションできる知識を持ってもらえたら」
まずは自分を知り、日本の植物のパワーを借りながら楽しくエイジングをして美しく生きる。そんな生き方が新たな時代のスタンダードになりそうです。
「おはようございます!」と颯爽と取材現場に入ってきた森田さんを見るや否や、「髪、綺麗ですね……」という言葉が口をついて出ていました。美しい黒髪はハリとツヤに満ちて、緩やかで美しいカーブを描いていたからです。そんな私の反応に、「今年56歳なんですけど、まだ白髪が少なく染めたことがないんです」といたずらっぽく微笑む森田さん。その瞬間に、もう心を掴まれてしまいました。取材で話を伺えば伺うほど、偉人の伝記をリアルタイムで聞いているような気分になるとともに、きちんとこの温度感を伝えられるかなと不安にもなってきた私。どうかみなさんに私の拙い原稿を通じて、森田さんの情熱と慈愛が届いていますように。
TEXT: AYAKO UENO
PHOTO: SOICHI ISHIDA
エディター AYAKO
雑誌のビューティ担当などを経てフリーに。気になるコスメや美容法はすぐにトライする派で最近はインナービューティに興味津々。
料理と美味しいお店探しも大好きな食いしん坊。