IN MY ROOMギャラリーのような空間で VOL.01 竹内優介/インテリアスタイリスト
2022.11.04
住まいには、住む人のこだわりや人となりがダイレクトに表れるもの。インテリアに一過言ありのクリエイターたちの住まいと美学を知るべく、お宅訪問の連載がスタート。第一回目は大好きなものに囲まれたアートギャラリーのような一室に住む、インテリアデザイナーの竹内優介さんが登場。
「お部屋で使いたい」とセレクトしたLife&Beauty by JUN ONLINEのお取り扱いアイテムもあわせてご紹介します。
竹内優介
1993年、東京都生まれ。大学在学中から、第一線で活躍するインテリアスタイリスト黒田美津子に師事し、現在は「ラボラトリー」に所属して活動する。デザイン誌やファッション誌のスタイリングページや企業広告の制作などのインテリアスタイリングを手がける。
Instagram: @116.107.107雑多なものは視界に入れずに“非日常”を堪能する
竹内優介さんの住まいは、やわらかな自然光がたっぷり差し込む、白を基調にしたワンルーム。「25歳までに一人暮らしをしよう」という目標を胸に、物件探しをしていたところ魅了された築50年を迎えるビルの一室は、自ら作成した家具と限られた空間を最大限に魅せる工夫が随所にみられます。
「床や建具の扉がフェイクな素材ではなかったこと、築年数は経っていましたが手を加えたらよくなりそうと感じた点が、この物件にする決め手となりました。遮光カーテンを使わず、カーテンは薄い布地を2重にした特注品。朝、日の光で目覚める瞬間に幸せを感じます」
竹内さんにインテリア選びのモットーを聞くと、意外な返答が。
「もしかしたら、この先、自分がウッドを基調としたインテリアを好きになったり、雑誌『Apartamento』のような住まいにしたくなるかもしれない。スタイリストとして様々な家具のテイストに触れたい気持ちもあるので、それらを受け入れてくれるベーシックなものを購入するようにしています。いまはシンプルで全体的に無彩色なトーンのインテリアが落ち着く気分です」
ベッドまわりは、ファッション感覚でコーディネート
仕事柄、ベッドリネンも撮影に持ち出すこともあるので、頻繁に変えるという竹内さん。部屋の一番奥に鎮座するベッドは、白やグレーのほか、ブルーストライプなど気分に合うベッドリネンをいくつも持っているそう。
「枕カバーは、ストライプや格子柄など、スウェーデンのベッドウェアブランド〈Magniberg〉のものが大のお気に入り。色使いや柄は自分の洋服の好みとリンクする点も多々あり、ファッション感覚で楽しんでいますね。デュべカバーはリネンなんですが、〈H&M〉でコスパの良いものを発見。個人的なこだわりは、視界に見える側のフラットシーツをマットレスに折り込まずにベッドスカートのように垂らすこと。ベッド下の収納をカモフラージュしています」
ベッドに隣接する壁は、自ら大きなベニヤ板を仕入れて切断し白く塗って、建てつけをしたのだそう。その上に、アート作品のように額装されたプリントがかけられています。
「大好きな写真家ウタ・バースの作品をkinko’sで出力して、自分で額装したものなんです。ピンボケした感じが、強すぎず弱すぎず好きなテイストで。まだ本物は買えないけれど、いつか作品を購入して家に置きたいと思っています」
収納は見た目がよく、効率的にものを保管する方法で
驚くべきは、完璧に管理された洋服の収納方法。むき出しになっているものの、アイテム別に整然と並び、まったく物量の圧迫感を感じません。
「もともとは天袋もふすまもない押し入れで、自分でブラインドをつけました。できるだけものが入るようにしたいと考えた結果、ポールは横よりも縦の方がいっぱい収まることがわかって。縦に3本ポールをつけました。見えていてもあまり違和感がないのは、洋服は好みの幅が決まっているからかもしれないですね(笑)」
洋服ラックの下の木製の棚も、自分で引いた図面通りに木の板を切って、組み立てて作成したそう。ぴったりとはまる家具を作り、創意工夫で空間を有効活用することに喜びを感じると語る竹内さん。他にも、お手製の玄関とリビングを隔てるシェルフや、玄関の天井からポールを吊り下げた洋服ラックも、室内の見た目を損なうことなく、機能性をもたらしています。
シェルフの中には、キャンドルなどの香りものや〈iittala〉や〈Valerie Objects〉のフラワーベース、ジオ・ポンティがデザインした〈Fontana Arte〉の小さなランプなどが並んでいます。下段には、ヴィンテージのレコードプレイヤーも。
「’63年の〈BRAUN〉のもの。昔はオーディオ機器も作っていました。学生の頃から、これをデザインしたディーター・ラムスが好きで、ずっと欲しいと思っていました。社会人になって思い切って購入しました。部屋の中が好きなものしかないのは、自分の好きなテイストがしっかり根幹にあって、ピンポイントで欲しいものが常にあるからかもしれませんね」
手作りの棚とワイヤーシェルフ
「ソファの横に佇んでいる小さな棚も、自分で作りました。でも、サイズが小さくなると意外と可愛くなりすぎてしまって。また機会を見て作り直そうかと思っています。通常は棚の背面になる部分を正面に持ってきて、視界に入れたくない細かなものはサイドから取り出せるようになっています」
一方、室内に点在しているのは、アート本や写真集、洋書などの数々。
「好きなアーティストの本は、すぐ手が届く場所に置いておきたい。本棚やリビングテーブルにしているのはヴェルナー・パントンのワイヤーシェルフ。組み合わせて使えるので、スペースや用途によって活躍してくれます。窓辺のライトも同じデザイナーのものですよ」
まだまだある、竹内さんのお気に入りのインテリアたち
「最近スチールの素材が好きで、ヴェルナー・パントンのラウンジチェアを購入しました。軽やかで圧迫感が少ないので部屋にちょうど良さそうというのと、ずいぶん昔にデザインされたものだけどコンテンポラリーな雰囲気があって、古さを全く感じさせないんです」
ダイニングの椅子も、昨今の金属製マイブームで〈カール・ハンセン&サン〉のポール・ケアホルムに。その前に使っていた椅子は、手放すのは惜しいから、友人に預けて使ってもらっているのだとか。
「〈MARENCO〉のソファはデザイン自体は古いものですが、丸いフォルムが可愛くて気に入っています。ヴィンテージは年代にこだわりがない分、フォルムにはこだわりがあるかもしれません。中古で譲り受けて、布のカバーだけ新品に替えました」
最後に、部屋の中央に置かれた三角形の照明について尋ねてみました。
「そのまま床に置いたり上から吊るせたり、簡単に移動させられる優れもの。よくある天井に備え付けなったものがありますが、あれだけだと味気ない。照明が好きで部屋に必要以上の照明があるのですが、気分で置く場所を変えたり、あれこれ灯して楽しんでいます」
インテリアスタイリスト、竹内優介さんが気になるアイテム
清涼感がある香りもシックなパッケージも好みなキャンドル
「デンマークのブランド〈FRAMA(フラマ)〉は、以前からいいなと思っていました。キャンドルは、 イタリア製のガラスビーカー入りで、そういったブランドの心配りが好感度高いですね。St.Paulの香りは清涼感あって爽やか。レモングラスを始め、ベルガモットやシダーウッド、サンダルウッドなど。さっぱりした柑橘系と深みのあるウッド系が夏っぽい、気持ちがいい香りだと思います。香りは用途によって使い分けているのですが、これは休日の朝に使いたいと思っています。グレイッシュなガラスが好きで、飾り棚にもいくつか置いています。並べても馴染むのが嬉しい」
【FRAMA/フラマ】Scented Candle 170g(センテッドキャンドル)
¥11,000
和のお香にモダンなアプローチをした新感覚のインセンス
「新ブランド〈VEDA(ヴェーダ)〉は、試してみたいと思っていました。アンバー、モス、イランイランの香りに、日本のお香っぽい香りがかすかにします。くすんだ香りかと思ったら、意外とフルーティな甘みを感じる香りでした。窓を開けた時の木の葉の匂いということで、暖かな冬のイメージなのかもしれません。眠る前のリラックタイムに使うのにぴったりですね。パッケージもあまり見ないデザインで、隅々に作り手のこだわりを感じます。インセンスは短い分、太さがあって部屋の中でも扱いやすさそうです」
ずっと探し求めていたインセンスホルダーはシルバーが決め手に
「〈LAN(ラン)〉のインセンスホルダーは、自分の部屋にすっと溶け込むデザイン。なかなか好みのものに出合えずにいましたが、このフォルムとメタルっぽい質感が目に留まりました。シルバーの部分は実は陶器。これに透明のガラスのスタンドを乗せて使うデザインが珍しいですね。〈VEDA〉の太めの線香も、ちょうどはまるサイズ。シルバーの陶器は、パロサントにも使うこともできそうです。ガラスのテーブルの上に置くと、透明感が引き立っていいかもしれません」
現在の家に住んで早5年。いつか自分の家が欲しいと目を輝かせる竹内さん。聞けば、人生で2回は“自分の家”が必要と考えているそうで、次はもう少しリノベーションをして、さらに年齢を重ねたら0から家を建ててみたいと、夢を語ってくれました。長い目で住まいのコーディネートを考えるのも、楽しいライフプランになりそうです。
TEXT: AIKA KAWADA
PHOTO: SOICHI ISHIDA
今回、紹介したアイテムはこちら
エディター AIKA
大学卒業後、語学と服飾デザインを学びにパリへ。バイトで始めた編集・ライターが本業になり、ファッションやビューティを中心に執筆。週末は映画とビオワイン、パンがあれば幸せ。瞑想とアーユルヴェーダが気になる。